はじめに
ロケット打上げの失敗率は約2〜5%。1基数億ドルの衛星が一瞬で失われるリスクを引き受けるのが宇宙保険だ。宇宙保険市場は年間保険料約5〜7億ドルの規模で、ロンドンのLloyd’sを中心とするシンジケートが主要な引受先だ。メガコンステレーションの登場で保険の考え方も変化しつつある。
宇宙保険の種類
保険の段階
| 保険種類 | カバー期間 | 対象リスク |
|---|---|---|
| 打上げ前保険 | 製造〜打上げ前 | 輸送中の損傷、射場での事故 |
| 打上げ保険 | 点火〜軌道投入確認 | 打上げ失敗、軌道投入失敗 |
| 軌道上保険(生命保険) | 運用期間(1年更新) | 衛星故障、デブリ衝突 |
| 第三者賠償責任保険 | 打上げ〜帰還 | 地上への落下物による損害 |
打上げ保険が最も保険料が高く、衛星価値の5〜15%が典型的な保険料率だ。3億ドルの衛星なら1,500万〜4,500万ドルの保険料になる。
保険料の算定
リスク評価
保険料率はロケットの打上げ実績(成功率)、衛星の信頼性、ミッションの複雑さで決まる。Falcon 9のように100回以上の連続成功を記録したロケットは保険料が低く、新型ロケットの初号機は保険料が高い(あるいは引受を拒否される)。
メガコンステレーション時代の変化
Starlinkのようなメガコンステレーションでは、個々の衛星に保険をかけるのではなく、自家保険(セルフインシュアランス)が主流だ。1基25〜50万ドルの衛星を数千基運用するSpaceXにとって、保険料を支払うより打上げ失敗を自社で吸収するほうが経済的合理性が高い。
技術的なポイント
基礎知識
- Lloyd’s: ロンドンの保険市場。宇宙保険の世界最大の引受先
- トータルロス: 衛星が完全に使用不能になること。保険の全額支払い対象
- 部分損失: 衛星の一部機能が失われること。保険金は損失割合に応じて支払い
- セルフインシュアランス: 保険に加入せず、損失を自社で負担する方式
応用例
- Falcon 9: 高い成功率で保険料率が低い。衛星事業者の打上げコスト削減に貢献
- Starlink: セルフインシュアランス方式。個別衛星への保険不要
- GEO通信衛星: 1基3〜5億ドル。打上げ保険+軌道上保険が標準
まとめ
宇宙保険は、打上げと運用のリスクを金融的に管理する宇宙産業の重要インフラだ。ロケットの信頼性向上(特に再利用ロケットの実績蓄積)が保険料低減をもたらし、メガコンステレーション時代にはセルフインシュアランスという新たなモデルが台頭している。スペースデブリリスクや宇宙天気による損害が新たなリスク要因として保険市場の関心を集めている。
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