有人宇宙船の比較|Dragon・Starliner・Orion・新型宇宙船

はじめに

2020年代は有人宇宙船の選択肢が最も多い時代だ。SpaceXのCrew Dragon、BoeingのStarliner、NASAのOrion、ロシアのSoyuz、中国の神舟が同時に運用されている。各宇宙船の設計思想、性能、ミッションプロファイルは大きく異なり、LEO輸送から深宇宙探査まで目的に応じた使い分けが行われている。


主要有人宇宙船の比較

項目 Crew Dragon Starliner Orion Soyuz MS 神舟
開発 SpaceX Boeing NASA/Lockheed Martin RSC Energia CASC
乗員 最大7名 最大7名 最大4名 3名 3名
打上げロケット Falcon 9 Atlas V / Vulcan SLS Soyuz-2 長征2F
目的地 LEO(ISS) LEO(ISS) 月・深宇宙 LEO(ISS) LEO(天宮)
再利用 カプセル再利用 カプセル再利用(計画) 使い捨て 使い捨て 使い捨て
着陸方式 海上パラシュート 陸上エアバッグ 海上パラシュート 陸上パラシュート 陸上パラシュート
初有人飛行 2020年 2024年 (Artemis II: 2025年) 1967年(改良継続) 2003年

Crew Dragon

SpaceXのCrew Dragonは、NASAのCommercial Crew Programで開発されたLEO有人輸送船だ。2020年のDemo-2以来、10回以上の有人飛行を成功させ、ISS輸送の主力となっている。

特筆すべきはSuperDracoアボートシステムで、打上げ中の緊急事態時にカプセルをロケットから引き離す脱出能力を持つ。8基のSuperDracoエンジンは推進剤にNTO/MMHを使用し、ミリ秒単位で起動する。カプセルの再利用とDragonトランク(非与圧部)の使い捨てを組み合わせた設計で、打上げコストを抑制している。


Orion

Orion MPCVは深宇宙有人探査用に設計された唯一の現役宇宙船だ。アルテミス計画で月周回・月面ミッションに使用される。ESA製のサービスモジュール(ESM)が推進・電力・熱制御を担当する国際協力の産物だ。

再突入カプセルのヒートシールドはAvcoatアブレーション材で、月帰還時の11 km/s再突入に耐える設計だ。


次世代構想

インドのGaganyaan、SpaceXのStarshipクルーモジュール、Sierra SpaceのDream Chaserなど、次世代有人宇宙船の開発も進んでいる。Dream Chaserは再突入後に滑走路着陸する有翼機で、ISSへの貨物輸送から開始し将来的に有人化を計画している。


技術的なポイント

基礎知識

  • LAS(Launch Abort System): 打上げ異常時にクルーを脱出させるシステム。プル型(牽引)とプッシュ型(推進)がある
  • ECLSS: 環境制御・生命維持システム。CO₂除去、O₂供給、温湿度制御
  • MPCV: Multi-Purpose Crew Vehicle。Orionの正式名称
  • 有翼帰還: スペースシャトルやDream Chaserのような滑走路着陸方式

応用例

  • Crew Dragon: ISS輸送の主力。民間宇宙旅行(Inspiration4)にも使用
  • Orion: アルテミス計画の有人輸送モジュール
  • Starliner: Boeing開発。2024年に初有人飛行を実施

まとめ

有人宇宙船は、LEO輸送のDragon/Starliner深宇宙探査のOrionで明確に役割分担されている。Crew Dragonのカプセル再利用と高い打上げ頻度はLEO輸送のコスト革命をもたらし、Orionの深宇宙対応設計は月面回帰を可能にする。再突入技術宇宙放射線防護が各宇宙船の設計を根底で支えており、次世代の有翼機やStarship有人モジュールが2030年代の選択肢を広げていく。


参考文献

  • SpaceX, “Crew Dragon”, SpaceX Official Site. SpaceX
  • NASA, “Orion Spacecraft”, NASA Official Site. NASA Orion
  • Boeing, “CST-100 Starliner”, Boeing Official Site. Boeing

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