はじめに
NewSpaceとは、従来の政府・大企業主導の宇宙開発に対して、スタートアップやベンチャーキャピタルが主導する新しい宇宙産業のムーブメントだ。SpaceXの成功に触発され、世界で1万社以上の宇宙関連スタートアップが生まれている。2021年のピーク時には宇宙スタートアップへの投資額が約100億ドルに達した。
投資動向
市場規模と資金フロー
宇宙産業全体の市場規模は2024年時点で約4,000〜5,000億ドルと推定されている。そのうち衛星サービス(通信・放送・地球観測)が最大のセグメントで約60%を占める。
| 年 | VC投資額(宇宙セクター) |
|---|---|
| 2019年 | 約58億ドル |
| 2020年 | 約73億ドル |
| 2021年 | 約100億ドル(ピーク) |
| 2022年 | 約78億ドル |
| 2023年 | 約55億ドル |
2022年以降は金利上昇と景気減速を受けて投資が縮小傾向にあるが、防衛・安全保障需要が下支えしている。
主要セグメント
| セグメント | 代表企業 | 事業内容 |
|---|---|---|
| 打上げ | SpaceX, Rocket Lab, Firefly | ロケット打上げサービス |
| 衛星通信 | Starlink, OneWeb, Kuiper | メガコンステレーション |
| 地球観測 | Planet Labs, ICEYE, Spire | 衛星データビジネス |
| 軌道サービス | Astroscale, ClearSpace | デブリ除去・OOS |
| 宇宙輸送 | Relativity Space, Vast | 次世代ロケット・宇宙ステーション |
| 月・深宇宙 | ispace, Intuitive Machines | 月着陸船・探査サービス |
日本の宇宙スタートアップ
日本でも宇宙スタートアップが台頭している。
- ispace: 月着陸船HAKUTO-Rの開発・運用。民間月面着陸に挑戦
- Astroscale: スペースデブリ除去のグローバルリーダー。日英に拠点
- Synspective: 小型SAR衛星コンステレーション。防災データ提供
- Interstellar Technologies: 北海道から小型ロケットMOMOを打上げ
- ALE: 人工流れ星プロジェクト。宇宙エンターテインメント
課題と展望
淘汰の波
2021年のSPAC(特別買収目的会社)ブーム後、多数の宇宙SPACが株価低迷に苦しんでいる。Virgin Orbit(破産)、Momentus(上場廃止リスク)など、資金調達環境の変化に対応できない企業の淘汰が進んでいる。
防衛需要の拡大
一方で、宇宙の安全保障利用への需要は世界的に拡大しており、米国のSDA(宇宙開発庁)は数千基の衛星コンステレーションを計画している。防衛・安全保障がNewSpaceの新たな成長エンジンとなっている。
技術的なポイント
基礎知識
- NewSpace: スタートアップ主導の新しい宇宙産業。従来の「OldSpace」(政府・大企業主導)に対する概念
- SPAC: 特別買収目的会社。未上場宇宙企業が株式市場に上場する手段として2020-2021年に多用された
- SDA: 米宇宙開発庁。LEO衛星コンステレーションによる防衛インフラを構築
応用例
- SpaceX: NewSpaceの象徴。再利用ロケットとStarlinkで市場を変革
- Planet Labs: 地球観測データのサブスクリプションモデル。2021年SPAC上場
- Astroscale: OOS・デブリ除去の商業化を目指す日本発スタートアップ
まとめ
宇宙スタートアップ・エコシステムは、爆発的な成長と淘汰を同時に経験している。VC投資はピークから減少傾向だが、防衛需要と衛星データビジネスの実需が市場を支えている。SpaceXの成功モデルを追う多数の企業が競争する中、技術力・コスト競争力・市場フィットの三拍子を揃えた企業が生き残る。日本のispace、Astroscale、Synspectiveはグローバルに競争力のある分野で存在感を示している。
参考文献
- Space Capital, “Space Investment Quarterly”, Space Capital. Space Capital
- Bryce Tech, “Start-Up Space Report”, Bryce Tech. Bryce Tech
- 内閣府, “宇宙産業ビジョン2030”, 内閣府宇宙政策. 内閣府
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